立山・室堂から上高地までの縦走を敢行しましたので報告します。
この縦走を思いついた理由は幾つかあります。
・NHKで放送された「北アルプス大縦走」という番組で、田部井淳子さんとNHK名古屋の内多アナの立山~ジャンダルムの縦走を見たこと。
・今年の正月、燕岳の頂上から立山と槍ヶ岳をみて「あそこからあそこまで歩きたい」と思ったこと。
・幸い2週間の休みが取れたこと。
田部井さんと内多アナは台風による停滞も含めて21日間をかけましたが、これは番組撮影をしながらのことであって、ある程度の経験がある登山者ならば本来10日程度で可能な行程だと思います。私は長期間の縦走が初めてだったので、余裕のある日程を組んで13日間をかけました。山小屋にひとつずつ泊まりながらの「各駅停車大名登山旅行」です。いまどき山小屋も高いですからね。
7月21日(土) 第1日 立山・室堂
7:14 新大阪発サンダーバード1号に乗車。朝が早かったので相棒に持たされた行動食に早くも手をつける。比良山系はガスっており不安な天気。9時頃の車内アナウンスで福井県内強雨により九頭龍線は運休とのこと。その影響で富山着が5分遅れてしまった。
10:27 5分延着のため乗り継ぎ時間が10分しかなく、急いで富山地方鉄道へ。いったん改札を出たが、富山地鉄の場所がわからずしばし立ち尽くす。
11:40 立山駅でケーブルカーに乗り換え。次のケーブルカーを予約していたが、ギリギリ間に合ったのでこの便に飛び乗った。
13:00 高原バスを乗り継ぎ、室堂に到着。2009年のゴールデンウィーク以来、3年ぶりの室堂である。この季節でも大谷付近の雪は4~5メートル残っていた。
バスターミナルで名物の山菜そばを食べ、観光客に混じって玉殿の湧水で水筒を満たしておく。
小雨の中、観光客の群れから抜け出して一ノ越へと向かう。残雪が多く歩きにくい。おばさん2人組が這いつくばるように雪渓上で四苦八苦しているのに声を掛けて追い越して行く。登山道の整備をしていた人に聞くと、やはり今年は雪が多いそうだ。
15:00 一ノ越山荘に到着。6人部屋に1人だけで快適だけど少し寂しい。夕食で女の子2人組と話ができて少し癒された。明日は雄山から別山へ周回するそうだ。ビールと日本酒を飲みながら廊下のコンセントでカメラと携帯を充電。寂しいので早々に寝てしまった。
7月22日(日) 第2日 一ノ越~五色ヶ原
一ノ越山荘は室堂に近く観光気分の宿泊客が多いのか、登山者のマナーがなっていない。2時~3時頃の早立ちのグループが板張りの廊下をスリッパでペタペタ歩くので目が覚めてしまった。
4:30 外に出てみたがガスで視界なく、日の出はあきらめた。雄山へピストンするのも中止にする。
6:50 朝食後、カッパを着て出発。五色ヶ原方面へ行く人は誰もいない。結構険しい道が始まる。
7:30 龍王山の巻道で突然何かが襲ってきてビビってしまう。よく見たら雷鳥の母鳥である。そばに雛が4羽いる。雛を守ろうとして威嚇してきたらしい。雷鳥は普段は人の存在を気に掛けないが、威嚇する姿は始めてみた。無害な人間であることがわかったのか、すぐに雛の世話に戻った。
8:40頃 鬼岳付近でガスが晴れた。カッパを脱いだり着たり忙しい。雪渓も無事に通過。せっかく持って来たので4本爪アイゼンを付けてみたが、シャブシャブの雪では意味がなかった。やはり持ってくるんじゃなかったと後悔する。
9:40 獅子岳で休憩。今日初めて2人とすれ違う。左手に黒部湖を見ながら行くと、やがてガスの切れ目に五色ヶ原が見え始めた。山の奥にこんな広い台地があるのは不思議な感じがする。
11:00 有名なザラ峠だがこの天気では只の通過点にしか思えない。どんどん行くことにする。
12:00 五色ヶ原山荘に到着。今日の泊り客の一番乗りだそうだ。さっきザラ峠で話をした若いオニーサンと山荘で再会。今朝剣沢を出てスゴ乗越まで行くと言って出て行った。脚の強い人がうらやましい。
携帯電波が無いし、天気も悪いのですることがない。マンガでも読もうとするが、おもしろいのがない。笹本稜平「天空への回廊」を少し読む。これはおもしろそうなので帰ったらアマゾンで買おう。
15:00 ガスが薄くなってきたのでテント場まで散歩。雪はたっぷり残っている。三角地帯になっている遊歩道を回ろうとしたが残雪のせいか道がわからず、来た道を戻る。
16:10 突然「お風呂の準備ができました」との放送。この小屋は風呂があったんだ! 一挙に気分を良くする。
今日登山中に出会ったのはたったの4人。小屋は空いているだろうと思っていたが、それなりに宿泊客がやって来る。今日は6人部屋に4人だ。4人とも単独行。いちばん年上は東京から来たMさん。することがないので7時頃に寝ましょうか、となった。
7月23日(月) 第3日 五色ヶ原~スゴ乗越
5:00 外に出るとガスが晴れている。赤牛岳の左に槍ヶ岳、右に笠ヶ岳が見える。さらに右にはこれから行く薬師岳があるはず。
6:00 五色ヶ原山荘を出発。みんなスゴに向かって行く。今日もゆっくりペースで歩き始めた。朝露で花がきれい。雲のかたまりが山肌を流れていく。
しばらくすると後ろのほうで騒がしい話し声が聞こえてくる。そういうのは苦手なのでペースを上げて離そうとする。
7:10 鳶山で休憩していたら騒がしい4人組みに追いつかれてしまったので、写真を取り合って、ぎこちなく話の調子を合わせる。鳶山の西側がガスっていたのでもしやと思い光の具合を確かめると、やはりブロッケンが出ている。「ブロッケン出てますね」と4人組に声を掛ける。ブロッケンは次第にくっきりと見えはじめ虹色のリングになり、数分後には何事もなかったようにもとのガスに戻った。4人組みはいたく感動した様子で、それ以後なにかと世話を焼いてくれるようになった。七尾から来た山の会だという。
外人3人組が追い越して行った。英国男性1人、オーストラリア男女2人で、今日中に薬師平のキャンプ場まで行きたいとのこと。靴も普通のスニーカーのようだし無理じゃないのかと思うが。。。 薬師岳に行くなら昼までには次の小屋(スゴ乗越)を出発するように言っておいた。
13:30 スゴの頭付近。山の会のリーダーさんによると高天原が見えるというのだけれど、私には見えません。
15:00 昨夜五色ヶ原山荘で同室だったMさんと前後しながらスゴ乗越小屋へ到着。6時間のコースを9時間かけてゆっくり来たことになる。外人3人組みもここのキャンプ場におり、やはり薬師行きは諦めたらしい。振り返ると越中沢岳がきれいに見えていた。
少し先に着いた山の会はさっそく宴会を始めている。合流してYさん自家製の、種をまくところから作ったというキュウリのピクルスをつまみにして盛り上がり始める。食事をはさんで二階のベランダで山の話を咲かせているとそろそろ暗くなり、「話し声が大きいよ」と注意されて就寝。先に寝ていたみなさん、大変失礼しました。
7月24日(火) 第4日 薬師岳
6:30 Mさん、4人組の後に出発。テント単独行の人も混じって4パーティーが前後しながら休憩のたびに合流するというのを昼頃まで繰り返す。4人組みは太郎平まで行くらしく、ペースが少し速め。間山のあたりを最後に再会することはなかった。それにしても薬師越えの険しさは予想以上である。
11:30 北薬師岳。視界なし。
12:40 左に切れ落ちた金作谷カールをクリアして山頂に立つ。朝からガスっぽい天気で、午後から晴れることを期待しながらわざと遅いペースで歩いてきたのだが、やはり天気はいまひとつ。水晶岳から雲ノ平あたりにずっと雲がかかっている。
14:00 Mさん、テントの人、パトロールの女の子2人らといっしょに1時間ほど天気が変わるのを待っていたが、やがて薬師岳山荘(肩の小屋)に向けて下山を開始。こちら側は何の危険もないハイキングコース。気楽に降りていく。
15:00 薬師岳山荘に到着。最近建て直したらしく、予想に反してきれいで居心地が良い小屋だった。
薬師岳は巨大な尾根を延ばしたでっかい山だと実感した。朝は雨まじりのガスの中、午後は回復したがガスが晴れず、欲求不満の一日。小屋の横の丘に上がると薬師沢の向こうに黒部五郎が見えた。斜めに切れ上がった山容がカッコイイ。行ってみようかなと思う。
11:40 星を見に外に出てみる。目はあまりよくないけれど、南北方向に白い筋が見えた。雲ではない。天の川だと思った。
(続く)
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